▲写真:エルサレムの街
テレビや本の中でしか見たことがなかったイスラエル、パレスチナの光景が眼の前に広がり、自分が現地に来たことを実感しました。
少し肌寒くて、乾燥している空気。ヘブライ語とアラビア語の表記。路面電車。露天商に並ぶ宗教的なアイテム。石畳の街並み。一つ一つが私をわくわくさせてくれました。
このツアーで私はたくさんのものに心を動かされてきました。
それは喜びや感動だけでなく、イスラエル・パレスチナ問題の現実を見ての悲しみもあります。
現在、イスラエルとパレスチナは政治的、経済的な利益をめぐり争いの中にいます。
そんな時、ベツレヘムで出会ったマリアンさんというパレスチナ人女性の言葉を思い出します。
「政治家ではなく、人々の声を聞いて。」
マリアンさんは、聖地のこどもを支える会が過去に開催したプロジェクトの参加者です。
そして、現在はペアレンツサークルという団体で、イスラエルとパレスチナで犠牲者が出た家族同士の対話を通し、和解という道を模索する活動をしている方です。
彼女は強い意志のもと、この問題の解決を信じて草の根で頑張っている人の一人です。
ベツレヘム大学の学生、パレスチナで出会ったホームステイ家族、難民キャンプにおいてパレスチナに生きる人々の話を聞くと、その苦しみが姿を現します。
家の近くに検問所ができイスラエル兵を見る日常、分離壁建設のせいで移動に多大な時間をとられるなど。難民キャンプでは、もっと深刻な生活が待っています。
彼らは別にイスラエル人を追い出したいわけではなく、ただ平等な権利を求めています。
ベツレヘム大学の学生は海外に留学して、パレスチナに帰りこの国の大変な状況を解決したいと言っていました。パレスチナがイスラエルと平等な権利を獲得するためには、両者が対等な関係である必要があります。
テルアビブの街並みを見ていると、地中海ビーチの開発や高層ビルの建設など、イスラエルがどんなに経済成長の中にあるかがわかります。
パレスチナの経済も、イスラエルへの依存が強まっているとも聞きました。
このままイスラエルが、パレスチナを置き去りにしたまま発展を続ければ、両者の対等な関係というのは難しいのではないかと考えさせられました。
だからこそ、イスラエル、パレスチナ両者のコミュニケーションによって、苦しい立場にある人の声に耳を傾けることで両者の距離を縮める必要があると思います。
壁の向こう側にいる人々に少しでも思いをはせることがあったら、それは平和構築の一歩になるのではないかと思います。
また、この旅を通してたくさんの子どもたちにも出会いました。
耳に障害を持つ子どものための施設、エフェタ。名誉殺人を逃れた子どものための施設、クレーシュ。難民キャンプ。重度の障害を持つ子どものためのホガール・ニーニョス。
エルサレムでは二校の学校を訪問しました。
どんなに苦しい状況でも、過酷な現実と向き合う場所にも、必ず子どもたちは生まれてくることを実感しました。
そんな子どもたちのためにも、両者の平和構築は必ず成し遂げなければならないものであり、またまっさらな状態で生まれてくる彼らは平和への希望にもなり得る存在です。
テルアビブでホームステイした際、ホストファザーが私にこんな言葉をかけてくれました。
「広い世界を自分の目で見て確かめて、たくさん勉強しなさい」
インターネットを使って簡単に人と繋がれるようになった時代。
だからこそ、現地に行くこと、自分の目で見て考えることを大切にしたいです。
いい加減な情報に踊らせれることなく、現場に行くこと。
ネットでつながるのは、現地との出会いの後でもいいのではないかと思います。
今後も現地での出会いを大切にしつつイスラエル・パレスチナ問題に関心を持ち続け、この経験を周りに伝えていきたいです。
(文 福岡 梨奈/
2018年スタディー・ツアー参加者、大学2年生)