▲写真:人通りのないベツレヘム市街
<はじめに>
新型コロナウイルスが猛威をふるい続け、世界中を震撼させていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
残念ながらイスラエル・パレスチナでも新型コロナウイルスの感染が拡大しており、聖地に住む人々の生活に大きな影響が出ています。
日頃日本では、イスラエル・パレスチナに関する報道が少ないため、聖地の様子を知る手段が限られていますが、つい最近、エルサレム在住のヤクーブから聖地の様子について近況報告があったので、全3回に分けてヤクーブからのレポートを共有したいと思います。
ヤクーブは、2005年当法人の第一回イスラエル・パレスチナ・日本青少年交流プロジェクトで初来日。その後現地スタッフとしてずっと当法人と協力し、毎年、現地イスラエル・パレスチナや日本で行われる《平和の架け橋プロジェクト》や、日本人学生のためのスタディー・ツアー《平和を願う対話の旅》に責任者として貢献しています。またパレスチナ唯一のオルガニストで、現在はイエス様のお墓があるエルサレム聖墳墓教会の首席オルガニストとして活躍しています。また、イスラエル政府公認ガイドとしても活動しています。
先の見えない状況が続きますが、皆様が心身ともに健康で過ごせますよう、お祈りしています。
<ヤクーブからの近況報告>
2月末に、大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」からイスラエル人乗客が下船し帰国したニュースを見ていた時には、新型コロナウイルスがここまでイスラエル・パレスチナで猛威を振るうことになるとは、想像もしていませんでした。しかし今や(※4月8日現在)、イスラエルでは9,755名、パレスチナ(西岸・ガザ合わせて)では263名が新型コロナウイルスに感染しています。
私の個人的な見解になりますが、今回の新型コロナウイルスの感染拡大防止の措置について考えると、イスラエル政府もパレスチナ政府も最善を尽くしていると思います。イスラエル政府は一人でも多くの感染者の命を救うために、最善の医療体制を整えようと奮闘しています。それはパレスチナ政府も同じですが、パレスチナにおいては、そもそも医療インフラが整っていないため、感染拡大防止の措置に必要な人員や物資が足りていないのが現実です。
新型コロナウイルスによる経済的打撃については、イスラエル・パレスチナともに大きな影響を受けています。イスラエルのネタニヤフ首相は、新型コロナウイルスの感染収束後には必ず、イスラエルの経済を再活性化させると言っていますが、現行の厳しい措置により今やイスラエルの失業率は25%まで上がり、深刻な問題となっています(補足:2020年2月の失業率は3.6%ほど)。また、80,000世帯のイスラエル国籍のアラブ人(パレスチナ人)は、仕事がないために、経済的に非常に厳しい状況に置かれているので、なんとか社会保険制度を使い、経済的支援を受けようとしています。しかし、新型コロナウイルスの影響でイスラエルの物価がさらに高くなっているため、支援金だけでは足りないのが現状です。このような厳しい状況はこれまで、パレスチナだけの話だったのですが、今やイスラエルにいるアラブ人(パレスチナ人)も同じような状況に置かれ始めています。経済的危機に陥っている人が本当に増えています。
教会やいくつかの団体が、この経済的危機に対して役に立とうと頑張っていますが、それには限りがあります。毎日インターネットを開いても、テレビを見ても、新型コロナウイルスについてのニュースばかりでとても憂鬱ですが、一人一人が外出を自粛し、みんなでこの危機を乗り越えられることを祈っています。今回、新型コロナウイルスの感染防止の措置を行うに当たり、イスラエル政府とパレスチナ政府がお互いに歩み寄り、この危機を一緒に乗り越えようとしている姿が見られ、とても嬉しく思っています。この歩み寄りが危機を乗り越えた後も持続し、イスラエルとパレスチナに住む人々により良い未来を与えてくれることを切に願っています。
(文 ヤクーブ・ガザウィ/現地スタッフ)
(翻訳 池上遥)