「必ずまた戻ってこよう!」そう心に刻んだイスラエル・パレスチナ。
2014年3月にスタディツアーで初めて訪れ、約一年半経って、ようやくこの地に帰ってくることができました。今年の8月末から、パレスチナ自治区ラマッラ近郊のビルゼイト大学に留学をしています。ビザの更新次第ですが、可能ならば来年の夏まで、約1年こちらに滞在するつもりです。
こちらに来て最初の一か月は、驚くほど平穏に過ごすことができました。大学から紹介されたアパートはとても快適。自分の部屋から眺める景色はのどかで、誤解を恐れずに言うと、平和そのもののように感じられました。「ここに住んでいると、苦しんでいる人や困っている人がいることが信じられないし、想像できない。」と、オランダ人のルームメイトが話していたのを思い出します。
しかし、「平和」かのように思われた私の留学生活は、突然終わりを告げます。
ご存じの方も多いと思いますが、現在、イスラエル・パレスチナの情勢は悪化し、緊張が高まっています。9月に聖地「神殿の丘」を巡って衝突が起き、その後、デモや衝突は各地に広がりました。死者負傷者の数は増えるばかりです。幸いにも、私の家の近くでは衝突は起こっておらず、見かけは以前と変わらない「普通の」生活を送っています。しかし、私がエルサレムに行く際にいつも利用するカランディア検問所や、留学先の大学付近といった自分の生活圏内でも衝突が起こっています。実際にその時の映像や写真を初めて見たとき、恐怖で顔が青ざめました。また、メディアの「第三次インティファーダが始まる懸念あり」という報道を目にし、自分の身を案じるとともに、プロジェクトで出会った、イスラエル人、パレスチナ人の友人一人ひとりの顔が頭に浮かびました。
情勢が悪化し、私のことを心配して一番に連絡をくれたのは、プロジェクトで出会ったイスラエル人の友人で、彼女はその後も何度か「大丈夫?エルサレムに行くときは一人で歩いては絶対に駄目だよ。」と温かいメッセージをくれました。本当に私のことを思って、気にかけてくれていることが伝わり、心強く感じ、大きく励まされました。イスラエル人を標的とする殺傷事件が相次いで起こっているため、私の方も彼女たちを心配し、くれぐれも気を付けてとメッセージを送ると、「とても怖いよ。護身用に催涙スプレーを買ったから少し安心できる。彼らは私たちを殺したがっている、ユダヤ人だからという理由だけで!狂っている!」と返信が来ました。私は暴力を正当化したくないし、彼女がどれだけ怖がっているのかも察することができます。しかしそれでも、「狂っている」パレスチナ人が、「ユダヤ人だからという理由だけで」、今回の事件を起こしていると考えることはできないし、このように理解すると平和への道は完全に閉ざされてしまうでしょう。
一方で、ヘブロンに住むパレスチナ人の友人からは、「イスラエルはここの住民みんなに、銃を撃ってくる。ユダヤ人は殺人者だ!」というメッセージを受け取りました。
このような言葉を、友人から聞くたびにやるせないし、板挟みになっているような気分になります。イスラエルに行ってもパレスチナに行っても、友人やその家族からいつも温かく迎えてもらう私にとって、「狂っている」パレスチナ人、「殺人者」であるユダヤ人という言葉はどうしても受け入れられないし、心から悲しいのです。パレスチナの友人から紛争について語られたとき、イスラエルに友人を持つ私はなんだか自分を裏切り者のように感じるし、逆もまた然り。両側に友人を持つことで大きなジレンマを抱えていますが、それでも私は彼らと良き友であり続けたいし、両側から話を聞くことによって自分なりに平和への糸口を探していきたいと考えています。
(文 植田 陽香/2014年スタディ・ツアー参加者、パレスチナ・ビルゼイト大学留学生)