▲写真:ホストファミリーとの最終日の夜
スタディ・ツアーに参加した理由
私は将来国際機関で働き、「難民支援」を仕事にしたいと思っています。
このツアーが難民キャンプに訪問する予定だったため参加しました。世界各地の難民キャンプを自分の目でみてきましたが、パレスチナ難民は世界にみても長い歴史を持ち、未だに帰還を許されておらず政治的に翻弄されている難民と言えます。
そんな彼らがこの先帰還ができるのか、彼らの最終的な帰還の地はどこなのかなどたくさんの疑問を抱えこのツアーに参加しました。
私はアラブ諸国がすごく好きで彼らの文化、人間性、食、全てに18歳の時に魅了され、いつしか中東に行ってみたいという思いが膨らみ卒業を間近に控えたタイミングでこのツアーを発見し、「ここで行かなければ絶対に後悔する!」という思いで参加を決めました。
日本で「中東」と聞くと「危ない」、「未知の世界」というイメージが一般的ですが、私の中に「危険」というイメージはなく、イスラエル・パレスチナと聞くと「お互いがお互いを嫌っている」、「常に険悪の仲」というイメージを持っており、大学で得た知識しかなく早く現地をみたいという思いがあり、渡航する前から楽しみでした。
このツアーでは本当にたくさんの場所を周り訪問し、消化不良な部分がたくさんありますが、ホームステイした家族はすごく暖かく、参加者もとても仲が良く人と人との繋がりの大切さをあらためて感じました。
しかし、イスラエルとパレスチナを隔てる分離壁の存在はそこにあり、常に彼らの中には不安、恐怖、憎しみがあるということを感じました。
その中でも一番怖いと感じたことはイスラエル国内の関心度の違いでした。テルアビブに行った時にイスラエルも移民国家であるということがわかり「誰がイスラエル人なの?」という疑問が出てきました。
宗教も同じです。
私たち日本人からすると宗教と聞くと一歩引いてしまいがちですが、信仰の度合いや宗派によって変わるということを自分の目で見ることができました。
多様性が重視される世の中において「対話」は一つの方法でしかないけれども、話さなければわからないことはたくさんあり、相手を理解することの難しさ、当事者にはなれない第三者目線、だけど第三者だからできること、をこのツアーではすごく考えさせられるものでした。
このツアーで訪れたデへーシャ難民キャンプはわたしが今まで訪れたどの難民キャンプより発展していて一つの町化していたことに驚きを感じると同時に無力さも感じました。
将来的に「難民」という言葉がなくなることを望んでいるけれど、「彼らはこの場所に定住することを余儀なくされそれが何世代にもわたりつづいており、何も変化していない」という言葉を聞いた時に将来自分がしたいと思っていることは無駄ではないのか、国際機関の無力さというのを痛感させられました。
サタフで聞いた話でも「一度パレスチナの地を逃れたものに変える場所もなければパレスチナ人も彼らの帰還は望んでいない」という話を聞き彼らは一体どこに戻れるのだろうと考えされられました。
現実を突きつけられ打ちひしがれた気持ちにもなりました。
しかし、難民キャンプの中にある学校に訪れた時、子どもたちの笑顔を見て彼らにはなにも罪はないければこれから国を担うであろう彼らの笑顔を消さないために私は難民支援を仕事にし、彼らのために働きたいと子供達の笑顔をみた時に気づかされました。
将来的に「難民」という言葉をなくしたいという思いは変わらず、このツアーで最大の目的を果たすことができ、大学卒業後は不安でしかなかった将来のことも少しは解決でき、「私はやっぱり難民支援を仕事にしたい」と再確認させてくれる場所でした。
このツアーに参加してアラブ諸国がもっともっと好きになりました。それと同時にもっとユダヤ人のことも知りたいと思いました。
今後、イスラエル・パレスチナの和平交渉がうまくいくとは思えません。しかし、若い世代がこうした垣根を超えて交流し相互理解をはかることができる草の根活動は第三者である私たちだからこそできることだと思いました。
また私たちもニュースや文献、授業で聞いたことだけを信じるのではなく、自分の目でみてから物事を判断することの大切さ、ステレオタイプをぬぐい去ることの必要性を伝えていきたいです。
名誉殺人によって親からの愛を受けられない子ども、障害を持っているということだけで母子とも危険にさらされること、難民第二世、これから国を担っていく子供達に罪はありません。
しかし、暴力でしか訴えることを知らない、そうした現状を私たちはどのように変えていくことができるのだろうか、「1つの雫が集まり池になり川になり海になる」という言葉はその通りだと思う。
もう一度イスラエル・パレスチナに行きたい、将来国連職員としてこの地を訪れたいと思いました。
(文 金森 早紀/
2018年スタディー・ツアー参加者、大学4年生)