▲写真:ホストブラザーを囲んで
もともと私は、知的好奇心からこのスタディツアーに参加しました。
ユダヤ人・アラブ人の文化、紛争解決、中東問題、言語など、興味ある分野が大いに盛り込まれたこのツアーは、私にとって願ってもいない絶好の機会でした。
私がこのツアーに参加して、何か変わるんだろうか。
ツアーの事前研修で、様々な題材をもとに平和の大切さが説かれるなか、私はやや懐疑的でした。
一人の日本人学生がイスラエル・パレスチナの地を10日間うろうろしたところで、変わるのは経済効果と私の満足度ぐらいだろう、と思っていました。
ただ、ツアーを長年率いる井上弘子さんが事前研修中に繰り返していた、
「友だちを作りなさい」という言葉が少し気にかかっていました。
イスラエルに着いてからの私たちは、予想通りエルサレム・ベツレヘム・テルアビブの名所を回り、予想通りぼったくられ、予想通りに私の知識は拡大しました。
ただ、一つだけ、私には予想以上のユダヤ人・アラブ人の友だちができてしまったのです。
ホストファミリーやその友だち、過去にこのスタディツアーに関わったことのある人々、タダで店のコーヒーを振舞うお兄さんなどなど、このような友達ができた後では、すなわち、スタディツアーを終えて日本に帰ってきてからは、イスラエル・パレスチナという土地やエルサレム・ベツレヘム・テルアビブ・ラマッラなどの都市が、異国ではなく、友だちの住む町として見えてくるようになりました。
例えば東日本大震災が起こったとき、私には東北に住む知人はいませんでした。
従って、多くの人が亡くなっているという報道を目にしても、ただ私に関係する、原発の問題だけが記憶に残りました。
しかし、地震の起こった数日後、昔の友達のお父さんが地震の当時仙台に住んでいたことを母から聞き、その時突然、地震が身近なものとして、私の、かつての知り合いを襲う脅威として再認識されました。
今後、パレスチナ問題に関するニュースは、私の友だちを介して、今までよりもリアルに私の耳に届くでしょう。
今後、各都市を襲うかもしれない戦火は、大学の講義や就活の時事ネタではなく、私の友だちを殺しかねない炎として私の目に映るでしょう。
「友達を作りなさい。」
と団体代表の井上弘子さんが、事前研修で繰り返していた言葉の重大さが、日本に帰ってきてやっと理解できました。
(文 茂野 新太/
2018年スタディー・ツアー参加者、大学3年生)