矢加部 真怜(2014年スタディ・ツアー参加者)のFacebookから
聖地エルサレムでは4月、ユダヤ教の過越し、キリスト教のイースター、イスラム教のラマダンと、それぞれのお祝い事が同時に行われました。私の住んでいる東エルサレムはラマダンムード一色。4月1日からの1カ月、人々が断食をしている日中の物静けさは、夜になると一転、イフタール(断食明けの夕食)を終えた若者や家族連れが思い思いに街に繰り出し、一気に賑やかな雰囲気に。旧市街のアラブ人地区は色とりどりにライトアップされ、祝賀ムードに包まれました。
普段はお世辞にもサービス精神旺盛とは言えない旧市街の猫も、お祭りムードでご機嫌なのか、膝の上に乗ってきて、ひとしきり戯れさせてくれました。
パレスチナ人の友人たちと、ラマダン定番のお菓子・カダイフを頂きました。チーズやナッツをどら焼きの皮のような生地でくるみ、シロップをかけたもので、日本人の味覚にはやや大味ですが、とても美味しいです。
しかし、4月15日金曜日の朝、お祭りムードは一転してしまいました。イスラエル警察がエルサレム旧市街にあるイスラム教の聖地「アルアクサ・モスク」に突入し、礼拝に来ていたパレスチナ人との衝突が起きてしまったのです。イスラエル側は、「嘆きの壁」や警察に向かって爆竹や石を投げ始めたパレスチナ人を散会させるためだったとしていますが、パレスチナ人少なくとも152人が負傷する事態となりました。
これを受けてガザ地区を実効支配するハマスもイスラエル側にロケット弾を放ち、イスラエルが空爆で応酬するなど緊張が高まり、情勢の悪化が懸念されています。
本来ラマダンとは、家族みんなで楽しく祝うものなのでしょうが、それが叶わない人もいます。イスラエル兵に抗議したことで収監されて帰って来ない子どもの写真をテーブルに並べてラマダンの食事をとるパレスチナ人の年老いた母親の写真や、6人の子どもを持つパレスチナ人のシングルマザーがベツレヘム近郊の検問所で銃殺されたニュースなど、胸が締め付けられます。
我々は、衝突や空爆、そして「テロ事件」などの顕在化した事件に目が向きやすく、振り回されがちですが、その根底にはイスラエル軍による60年以上にわたる占領という構造的暴力があることから目を背けてはならないと思います。
今、全世界の視線はウクライナの人道危機に注がれています。主権国家がもう一方の主権国家を侵略するという、いわば「分かりやすい戦争」が人々の注目を集める中で、占領や入植という常態化した暴力と、それが引き起こす様々な人道危機にどうしたら関心を持ってもらえるのか、そして日本人という部外者として一体何が出来るのか、ガザ地区への人道支援に携わっていても、ふとした瞬間に無力感に襲われます。
このような状況だからこそ、イスラエル・パレスチナ双方の若者たちと短期間ながら交流し、本音をぶつけ合い、友情を育んだ我々が、当事者の声を代弁し伝えていくことの意義は大きいのではないかと思います。「聖地のこどもを支える会」のスタディー・ツアーを通じてできたご縁を大事にしつつ、微力ながら発信を続けていきたいと思います。