▲写真:パレスチナ子どもオーケストラ(西岸地区)
世界中の紛争地に暮らす子どもや若者は日々逃れようのない障壁に直面し、彼らの持つ素晴らしい能力を伸ばすことができず、したがって夢を実現できないでいます。
パレスチナの子どもや若者にとってはこの状況はさらに厳しく、ことばでは言い尽くせません。イスラエルとパレスチナは長年戦争や紛争を体験してきましたが、今年2015年の10月初めからは、この10年間では最も厳しい緊迫した状態が続いています。
とくにヨルダン川西岸地区と東エルサレムではどこでも、対立が激化し、日に日に互いの憎悪や復讐感情が高まっていて、明らかに日常生活の安全が脅かされています。この事態で最も影響を受けるのは人々の経済状況です。現在、過去最高の数のパレスチナ人がイスラエルで働いているのですが、これでまた失業率がはね上がり、困窮状態に陥るのは明らかです。さらに重大なことは、この結果として、子どもたちの教育が直接の悪影響を受けることです。多くの子どもたちは通学もできず、学業もおろそかになっています。ヨルダン川西岸地区とエルサレムの間に何百というチェックポイントが設けられており、東エルサレムだけでも、地区と地区、通りと通りを分断するために24ものチェックポイントがあるからです。通行の自由が制限され、通学の途中で攻撃を受ける危険があり、警察の介入によって子どもや若者が逮捕されています。このような危険を避けるために普段の何倍もの時間をかけて遠回りをしなければなりません。想像していただけるでしょうか?
ヨルダン川西岸地区およびガザ地区のUNICEF代表、ピエール・プパールはこう言いました。「パレスチナのすべての子どもたちは、心のストレスにさらされている。彼らは不当な重すぎる犠牲を払わされているのだ」と。
とはいえ、苦しみだけに覆われてはいません。パレスチナの子どもたちは勉強も遊びも音楽も大好きです。生きることそのものを謳歌しています。一つの例をご紹介しましょう。80人の子どもや若者で編成されたパレスチナ子どもオーケストラのレベルは、世界中の同様のオーケストラに比べて決して引けを取らないと評価されています。この紛争の地にあって、バイオリンやフルートやチェロの音が聞こえるのは、ほとんど「奇跡的」といってもいいでしょう。
「聖地のこどもを支える会」の長年にわたる教育支援と里親プログラムのおかげで、数多くの恵まれない子どもたちや若者たちの生活の質が向上しました。「ぼくはお医者さんになりたい」「ぼくはサッカー選手になりたい」「私は看護師になりたい」「ぼくはパイロットになりたい」など、パレスチナの子どもたちも世界中の子どもたちと同じ夢を持っています。
彼らは、皆様のおかげで、きっとそれぞれの夢を実現し、自分の持てる力を発揮できるよう、学んでいくでしょう。彼らの道には数々の障害がありますが、支援者の方々の精神的、経済的ご支援のおかげで、希望の道が開けてくるでしょう。
心から感謝いたします。
(文 クラウディオ・マイナ/聖地における学校・ 学院のための連帯事務局 連帯事務局長)
(訳 井上 弘子)