▲写真:支援先の聖ヨセフ学院の子どもたち
エルサレム旧市街は、あらゆる意味で、いろいろなものが地球上で最も“凝縮”している町でしょう。1キロメートル四方の壁に囲まれているこの街は、言葉で言い尽くすことはできません。街の歴史は、戦争と平和、愛と憎しみ、そして破壊と再建で織りなされています。
旧市街は小さな地域に分かれており、一戸建ての家もあれば、何百年もの間に中庭の周りに複雑に部屋を建て増していった「ホッシュ」と呼ばれる不思議なアパート群があります。一つの部屋に一家6人かそれ以上の家族が住んでいることもまれではありません。折り重なるようにして建てられた住居にはプライバシーはほとんどないので、社会生活にも個人の生活にも大きな悪影響を及ぼしています。
劣悪な住環境は特に子どもたちに、心理面でも教育面でもまた健康の面でも害を及ぼしています。彼らには通りや路地だけが遊び場なのです。
貧しい家庭の子女をあずかる聖ヨゼフ学院
聖ヨゼフ学院は、エルサレム旧市街の中心にあり、寛容と愛に基づいた女子教育のための学校です。とくに旧市街で貧しい生活環境に苦しむ家庭の子女を受け入れています。その教育の目的は、将来家庭や社会のために働くことができる活動的で独立したパーソナリティを持つ女性を次世代のために育成することです。
バハ・ジュダのこと
6年生のバハ・ジュダは、家族とともに非常に不衛生で危険な、ぼろぼろの家に住んでいます。屋根が壊れかかっていて、昼間は太陽の光が差し込みすぎて大きな問題です。また先日はキッチンの天井が落ちてしまいました。幸い、誰も怪我をしませんでしたが、こんな環境に住んでいるので、家族仲が悪く、両親はとうとう別居してしまいました。
その後父親が病気になり、また同居が始まったのですが、今度は母親が癌になってしまい、何度も手術を受けました。
バハは、人見知りで悲観的、いつも独りでいます。12歳にもかかわらず、集中力がなく、あまり身の回りを清潔にしないので、同級生から敬遠されています。おまけにバハには学習障害があります。こんな苦しみを少しでも軽くするために、先生たちは、バハにコーラスに入るよう勧めました。めまぐるしく変わる家庭環境に適応し、困難を克服するために、彼女にはいろいろな支えが必要です。
家庭のひどい環境に加えて、注意力散漫や学習障害のために学校では孤立しているバハですが、芸術的な才能があって、歌を歌ったり、絵を描いたりするのが大好きなので、この分野での才能を伸ばしてあげられたらと願っています。
「聖地のこどもを支える会」からの支援は、バハのような子どもたちの成長を助けようという私たちの試みを、大いに励ましてくれます。これからもご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
(文 アベール・アタラ/聖ヨセフ学院 ソーシャルワーカー)
(訳 井上 弘子)