▲写真:旧市街のムスリムクオーターでは、入植者が天井をふさぎ、その上に家を建てている
スタディツアーに参加した理由
国際協力機関に勤める夫がパレスチナに駐在することになり、私は、昨年の秋よりエルサレムに住んでいる。エルサレムに生活の拠点を移してから、楽しい日々を過ごしているが、同時に、イスラエルとパレスチナの対立を日常的に目の当たりにし、胸が張り裂けそうな思いもしてきた。
にもかかわらず、この問題に対して何も貢献できない自分に焦りを感じていた。
そんな矢先に本スタディツアーの案内を頂き、何かヒントが得られるかもしれないと思い、ツアーに参加することにした。
スタディツアーの内容
普段、日常生活を送っているだけでは行けないような場所へ行き、様々な人と交流することができた10日間のプログラムであった。
- パレスチナの教育事情とは?(大学、小学校、聴覚障害児の学校を訪問)
- 中東のジェンダーイシューとは?(名誉殺人の被害にあう子供・女性の保護施設を訪問)
- 日本政府によるパレスチナ支援とは?(ジェリコにある工業団地、養蜂工場を訪問)
- ユダヤ人の歴史とは?(エルサレムにあるホロコースト博物館など訪問)
- 現地の人々の日常生活とは?(一般家庭でホームステイを経験)
- イスラエル・パレスチナ問題とは?(パレスチナ人のための人権保護センター、パレスチナの難民キャンプ、入植地などを訪問)
- 現地の大学生と交流(ヘブライ大(イスラエル)、ベツレヘム大(パレスチナ)を訪問)
スタディツアーを終えて感じたこと
ツアーに参加した結果、想像していた以上に複雑な問題であることがわかり、ますます頭が混乱した。絶望したような心持にさえなった。
イスラエル人もパレスチナ人もみな「私は平和を望む」口々にと言うが、その平和の定義が異なり、時にその平和を望む行動が相手を傷つけているのだ。
どうしたらイスラエル人もパレスチナ人も幸せになれるのか? 妥協点はあるのか?
疑問は尽きない。
しかし、私にとってこのツアーに参加した意義は大きい。
まず、今の私の知識レベルでは到底この問題に立ち向かえないことを認識。これまでなんとなく「何かこの問題に貢献したい!」と思っていた自分が恥ずかしいくらいだ。
今後は、正しいファクトをインプットし、自分なりに意見を持てるようになりたい。
そして、今回のツアーで出会った人との出会いを大切に、自分にできる範囲でアクションも起こしていく。そうでないと一生考え続けるだけで何もできそうにない。
今回のツアーで感じた「絶望」は決してマイナスな意味だけでなく、ここを起点とし、この国の「真」の平和に本気で貢献するための重要な感情であると今は理解している。
(文 池上 遥/
2019年スタディー・ツアー参加者、社会人)